いつかのはなし

「暮らしを仕事に」尊敬する彼女が言っていたその言葉を、わたしはひっそり愛でている。すごくすてきな生き方だと思った。近頃のわたしといえば、「手仕事をしたい」と手を動かすことに夢中で、日々のながれやゆとりを感じることを忘れていたように思う。その言葉にはっとして、毎日すこしづつではあるけれど、取り戻しつつある。

 

今日はしとしと雨だった。

 

午前中、実家からりんごとクリーニングしたセーターが送られてきた。久しぶりにみた信濃毎日新聞に包まれていたりんごたちは、わたしの知ってるりんごだった。みんなばらばらの、ときどき鳥がこっそりつついているりんご。

 

買い物がてら京大グラウンドの疎水沿いを散歩。雨だからだろうか、だれもいなかった。たまにジャージ姿の大学生が通っていたくらい。雨で湿った土の匂い、雨が溶けた空気の匂い、濡れて濃い緑になった葉っぱや紅い実、雨にも負けず飛ぶちいさい虫、わたしの知ってる景色だった。木々がカサカサゆれる雨の日の森。

 

いつかのはなし、綺麗な空と水と空気と、凛とした森と、静かな故郷で、私はものづくりをするんだろうなと思った。

いつかのはなし、大好きな仲間達がそこに遊びにきて、一緒にご飯をたべたりお酒をのんだりして、作品を見せ合いっこして、未来の話ができたらいい。

いつかのはなし。

いまはまだ、きらきらとひかる街の灯も魅力的に思うけれど。